【規制】キノウ制度の問題点をいかに理解すべきか(45)

2024年9月30日

※「ヘルスライフビジネス」2024年5月1日号掲載の記事です。                        3月27日に都が2件の機能性表示食品(キノウ)広告への措置命令を公表しているが、それから4月22日までで行政処分は特商法の業務停止処分など3件しか見当たらない。健康訴求広告の摘発も見当たらないので、今回は紅麹事件でのマスコミの当事者とキノウ制度自体に対する批判的な報道を検討することで、キノウ制度に内在する問題点について、私見を述べたい。反対意見のない制度はあり得ないかもしれないが、キノウ制度の場合、反対意見の根強さは制度創設から10年程たっても変わらない。それに対する事業者側の理解に問題があるように筆者には思える

問題点は医薬品と共存できる法的根拠の曖昧さ

紅麹事件の報道でのキノウ制度批判の内容

毎日新聞の4月8日朝刊の社説「紅麹問題と機能性食品 事業者任せの制度検証を」での、制度批判の要旨を紹介すると次のようになる。

「この制度は成長戦略の一環で導入され、新規参入しやすくするため、安全性や有効性の評価を届出だけで済むようにした。製造管理や健康被害の報告に関する規制が不十分で、効果の表示も事業者任せの部分が大きい。顧客の判断だけで買えるので過剰摂取につながるリスクもある」。

 また、4月11日の朝日新聞朝刊は、大手製薬会社で開発・品質保証を担当していた人の意見を掲載しており、要旨を紹介すると次のようになる。

「制度が導入されたとき~みんな疑問を抱いていた。医薬品とは異なり、安全性や効果についてのルールがあまりにも緩い。企業側に都合の良い試験結果を根拠として提出することもあり得るし、チェック機能に欠陥があるので、消費者を誤解させる広告があると感じている」

キノウ制度批判に関する分析と検討(1)

これらのキノウ制度批判を分析すると、製造管理や健康被害に関するものと効果の根拠に関するものに区分できるが、いずれも医薬品との比較に基づくものである。

これでは「医薬品のように信頼できないキノウなどは不要だ」と言っているだけで、リードで述べたように創設時の反対意見がそのまま紹介されているように筆者には思える。

 もちろん、前項の朝日新聞の記事は、キリンHDの社長が取材に対し「医薬品と同等の品質管理をしている」と述べたことなどを紹介しているのでまったく批判だけではない。しかし公平にみて、記事の要旨はキノウ制度批判にあると理解せざるを得ない。

 なぜこのような批判を行うマスコミがあるのか筆者は次のように考えている。

① マスコミの主な取材先が制度の反対派であること。

② キノウ制度の必要性を公平・客観的に説明する専門家がいないか、いても取材されないこと。

③ 制度の必要性を説明するべき立場の人が説明しないか、しても公平・客観的なものだと理解されないこと。

キノウ制度批判に関する分析と検討(2)

 そもそも、キノウ制度が創設された背景を「成長戦略の一環で導入」されたといった理解がマスコミでは主流のようだ。

まるで経済効果のためだけに無理やり創設されたように聞こえる。

 しかし、これは公平でも正確でもないだろう。

キノウ制度創設の背景として、一番に上げるべきなのは次の2点だと筆者は理解している。

① このまま医療を医薬品だけに依存していると健康保険制度での財政負担が増加して限界を超えてしまう。

② 医薬品だけの医療では、副作用による苦痛などを解消できない。

 これらの問題は昭和の末期から予測され、行政上の対策が行われてきたが、確かな成果が得られなかった。それらを背景として、キノウ制度が創設されたはずである。

 しかし、医薬品でなければ効果は得られないとする医学の建て前と、医薬品の売上減を危惧する医療・製薬会社の利害が、キノウ制度反対の拠点になった。そのような反対論を払拭できないまま、創設された制度であると筆者は理解している。

健食側に必要な問題点の理解と対応策の検討

 今回の紅麹事件で、制度の問題点が露呈したことは間違いない。製造管理や健康被害の報告に関する規制が不十分であったことによる制度改正は当然のように見える。

 しかし、どのように改正されても、事業者側の意識次第で不祥事は起こり得る。現行制度でも、製造管理などが適正に行われていた事業者が大半だったわけで、事業者にとってその点の理解が必要である。

 もともとこの制度での効果の表示に関する根拠は、食品表示法・表示基準の規定にあり、その点は変えようがないはずである。だが、広告規制は根拠法とは別に、主として景表法で行われておりこの規制も強化されることが危惧される。

 私見では、現行のキノウ制度を批判するのであれば、製品の表示が根拠で、効果に関する根拠が曖昧な点にある。身体の機能性の維持や改善に関する医薬品の場合との違いについて、法的根拠の不明確な点が是正されなければ、医薬品の側からの制度批判への対応の難しさも変わらないはずだ。

それを変える制度の改正こそが望まれるわけだが国や行政側にたよるだけでは実現するとは思えない。業界自らでなにができるか、本気の議論が望まれる状況になってきたように思える。


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