健康食品タタキが始まった!(131)

2025年3月4日

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1984年になった。年明けに週刊誌の女性記者が取材にやって来た。なかなかの美人で、なんだか華やいだ気分になった。「同じ編集でも随分違うものだ」と思わず口をついて出た。宇賀神さんと目が合うと、「悪かったわね、この程度で」といじける。

そういえばここ数年電車の雑誌の中刷り広告で「ブームの健康食品」、「ダイエットブーム」といった見出しをよく見かけるようになった。たいがいがポジティブな内容で、我々から見てもちょっと言い過ぎじゃァないのと思うようなものもあるが、これがさらにブームを煽る。おかげで市場は4000億円と言われるようになった。マスコミの影響は絶大だった。

それでお姉ちゃんの記者でなくても、つまりおじさんの記者でも、取材に来ると親切に接した。そんなことをしているうちに私が広報の窓口のようになった。そうこうするうちに、あるマスコミ関係者から面白いことを聞いた。マスコミは「さんざん煽って商売し、叩いて商売にする」のそうだ。その時は聞き流したが、この頃になって、これが健康食品のブームにも当てはまることを知った。というのもブームが本格化すると、案の定叩きが始まったのだ。

昨秋に冷水を浴びせるような記事が朝日新聞に載った。ビタミンEの摂取で過剰症が起こるという記事だ。どうも摂った人に発疹が出たということらしい。困ったことに、この頃の健康食品のブームはビタミンブームだった。なかでも売れているのはビタミンEとビタミンCだった。このネガティブなニュースはビタミンEの売り上げを直撃する可能性があった。

この少し前にもビタミンCで似たようなこと記事になった。愛知県の大学の研究者がビタミンCを摂取すると発がんリスクが上がるといった研究を発表した。ポーリング博士のメガビタミンに異を唱える研究だ。ただし、ネズミの実験で与えた量は驚くほど多く、必ずしも評価に値するような発表ではなかった。とはいえ、マスコミは面白ければ飛び付くのである。それがどんな影響を及ぼそうがお構いなしだ。

渡辺先生も呆れて、「あれだけの量を与えればストレスでがんになるよ」といって笑っていた。今回のビタミンEではおそらく大豆アレルギーが原因ではないかという。アレルギーの人は少しでも大豆の成分が含まれると症状が出る。症状の一つが発疹だそうだ。大手製油企業の豊年製油(現・J-オイルミルズ)の太田さんに電話で聞いてみた。太田さんもおそらくそうではないかとう結論だった。

幸い、ベタ記事で目立たなかったせいか、業者の間では話題になったが、市場に大きな影響はなかった。しかし後から思うと、この辺りから健康食品を巡る潮目が変わってきていたかもしれない。そしてそれが春になってはっきりする。3月のある日だった。

「大変だ!」と葛西博士が息せき切って、事務所に飛び込んで来た。手には新聞が握られている。

「どうしたんだ!」と編集長の声が飛ぶ。経済企画庁が健康食品の調査を発表したという。「それがどうした」というと、「健康食品タタキだ!」という。博士が机の上に広げた新聞を囲むように皆で見入った。

調べた健康食品の総数は1294品目と膨大な数だった。それらの商品の5割から6割になんと薬事法上で禁止されている「使用量」が書かれていた。また、これも薬事法上違反になる治療や予防の効果の印象を与えるものが多いという。結論として、業者にはこれらの問題に対する善処を促す一方、悪質な業者への規制強化の必要を訴えている。

「これじゃあ、健康食品の業者は法律違反の悪質な奴らばかりで、取り締まるのは当たり前だということになる」と葛西博士。

「役所はそれがいいたいんだ」と編集長。「しかしなぜ経済企画庁なんですかねェ」と岩澤君。確かに普通だったら厚生省や国民生活センター辺りがやりそうな調査だ。

「四の五の言っていてもしょうがない。すぐに関係省庁に取材!」と編集長の檄が飛んだ。

(ヘルスライフビジネス2019年9月15日号「私の故旧忘れ得べき」本紙主幹・木村忠明)

※第132回は3月11日(火)更新予定(毎週火曜日更新)

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