「鯨肉」機能性表示を活用した認知拡大に注力/共同船舶
「バレニン」「クジラオイル」健食素材で提案強化へ
鯨の捕獲・生産・販売や鯨資源の調査を行う共同船舶(東京都中央区、 http://www.kyodo-senpaku.co.jp/ )は昨年10月、生鮮食品の鯨肉「冷温熟成鯨赤肉」(写真右)と「鯨本皮」(左)が機能性表示食品として届出受理された。関与成分は、それぞれ「イミダゾールジペプチド(バレニン、カルノシン、アンセリン)」と「ⅮHA」。届出表示は「疲労感・ストレスの軽減」および「記憶力の維持」だ。同社では鯨肉の特徴成分「バレニン」をはじめ、鯨肉の健康的価値について研究を続けてきたが、今回の機能性表示を機に広く健康機能をアピールし、日本の伝統食材である「鯨肉」の消費拡大を目指していく。
共同船舶では昨年11月、鯨肉初の機能性表示食品「冷温熟成鯨赤肉」および「鯨本皮」を自社通販およびスーパーなどの小売店で発売した。鯨肉の健康的価値について長年啓もうを続けてきた同社であるが、「疲労感」「ストレス」「認知機能」といった具体的な表現可能になったことで「早くも一般消費者からも多くの反響を得ている」(担当者)という。
「冷温熟成鯨赤肉」の機能性関与成分であるイミダゾールジペプチドについては、鯨肉の特徴成分であるバレニンを中心に多くのエビデンスを積み重ねており、疲労感やストレスに関するものをはじめ、運動機能向上、認知機能改善、免疫力低下抑制などさまざまな機能性が示唆されている。
抗疲労作用については、35~60才の健常者12人にバレニン、アンセリン、カルノシンを含むイミダゾールジペプチド400mgもしくはプラセボを28日間摂取させ、身体作業付加および日常作業付加からの回復を比較した。その結果、試験食摂取群では作業付加から2時間後および翌朝の疲労感スコアの上昇が有意に抑えられた。同時に、作業負荷に伴う交感神経活動の亢進抑制作用と自律神経調節作用が確認されたことから、一時的なストレスおよび疲労感を軽減したと結論付けた。
一方の「鯨本皮」はDHAを関与成分に設定しているが、鯨の油にはDHA・EPAのほか、同じくオメガ3の一種であるドコサペンタエン酸(DPA)がマグロやブリよりも多く含まれることが知られている。動物試験では血中脂質や血糖値の減少作用が示唆されていることから、生活習慣病対策にも有効であると考えられる。
現在は、どちらも生鮮食品として販売されているが、同社ではサプリメントの素材としても鯨肉の提案を強化。酵素分解し、バレニン8%、総アミノ酸65%以上で規格した「クジラエキスパウダー」を供給しており、スポーツニュートリションから高齢者のフレイル予防まで、幅広い分野への活用が期待される。
今後は鯨油に含まれるオメガ3を規格した「クジラオイル」の開発も視野に入れているという。
鯨食文化の再興へ、優れた健康機能をPR
今年1月に行われた「2022年度販売方針説明会」では、同社の所英樹社長が「鯨は食のダイヤモンド」と形容し、健康食材としての魅力をアピール。さらに、商業捕鯨の中止によって増えすぎた中型のクジラの頭数を調整することで、漁業の持続可能性につながると訴えた。
1987年の商業捕鯨中止以降、わが国における鯨肉の消費量は低迷を続けてきた。一方、今回の機能性表示を機に鯨肉の有用性を広く訴えることで、鯨を食べた経験のない若い世代にもその魅力を啓もうし、日本伝統の鯨食文化再興に取り組んでいく考えだ。