「ニューマーケット創造に挑む」Online(2)
腸活ブームに伴い穀物の需要高まる
五穀米をメニューに採用するレストランが増えている
1966年、1冊の書が発行された。玄米を主食とした生活を実践する牛尾盛保医学博士が記した「玄米採食の効用」だ。「食原病」や「若さと美しさを創る驚異の菜食健康法-あなたの食生活には危険がいっぱい-」「海の健康法」等々、多数の書籍を刊行した。牛尾博士は、お酒を飲む前には必ず「噛め噛め噛め噛むほどに…」と唄を歌ってから、持参した玄米を食べていた。玄米を食べると二日酔いはしなかった。「日本人の食生活はいつの間にか肉を中心とした西洋風になってしまったが、今こそ玄米や雑穀に目を向けるべきだ」と常に口にされていた牛尾医博の教えを受け継ぐ人たちは少なくない。近年では五穀米をメニューに盛り込むレストランが増えると共に、インターネットによる通信販売の注文も増えている。日本有数の長寿地区として知られる山梨県上野原市の棡原地区に住む高齢者たちは先祖代々穀物を主食とし野菜をふんだんに取り入れる食生活を実践してきた。その結果、高齢者たちは強靭な体を保ち、穀物こそはまさに体の素をつくる「素食」であることが栄養学者によって明らかになっている。近年では、発芽玄米が人気を集め、五穀米も大手外食レストランチェーンの人気メニューの一つとして愛用者が増えている。
穀物を主食とした食生活を実践する棡原村の長寿者たち
穀物には食物繊維が豊富に含まれている。この食物繊維は、腸内環境を正常に保つビフィズス菌のエサとして活用されており、人の健康に寄与している。
ビフィズス菌研究の第一人者として知られる光岡知足博士に同行し、棡原地区を訪問したのは20数年前になる。
光岡博士とは、取材を通じ出会った。博士はかつて棡原地区の人たちの便を採取し、都内の高齢者ホームに入居する高齢者たちの便に加えて、当時光岡博士が所属していた理化学研究所のスタッフの便も採取した。
結果はビフィズス菌が一番多く摂取できたのは理化学研究所のスタッフで、次いで棡原地区の高齢者。高齢者ホームの高齢者たちの便中にはウェルシュ菌をはじめ悪玉菌が見つかったという。
棡原地区の高齢者たちのお腹にビフィズス菌が多かったのは、肉食はしないヒエ、アワ、キビ、麦といった穀物を主食としていたからだ。
外食レストランのメニューに五穀米
穀物は今や現代人の食生活には欠かせない大切な素材となってきた。
老舗企業のライスアイランドが運営する東京・有楽町駅前の交通会館に出店する穀物専門のファクトリーショップには、たくさんの穀物が取り揃えられており、OEM企業からの需要は多い。
穀物は腸活商品のブームもあり、さまざまな商品の開発に活用されている。数多い穀物の中でも、注目されている一つに五穀米がある。
例えばすかいらーくグループのレストラン「ジョナサン」の定番メニューに盛り込まれているのが五穀米。昼食時に五穀米の注文が多く(白米の注文も少なくないが)、特に女性たちの間で評判だ。
ファクトリーショップを訪問し新規顧客獲得へのヒントに
先に紹介した棡原地区に開館している長寿館の食事は、女性誌に取り上げられたことがあったが、ウイークデーになると若い女性たちがたくさん詰めかけていた。
女性たちのお目当ては、ダイエット食としての長寿食。棡原の高齢者たちが愛用しているヒエ、アワ、トウキビ入りご飯、ジャガイモを皮のまま炒めたセイダノタマジ、こんにゃく、ほうとうなど一人前700円。
肉食を中心とした食生活から穀物による〝腸活の必要性〟が指摘される中、食と健康を合言葉に地域住民のアドバイザーとしてのドラッグストアや調剤薬局店舗では、さまざまな穀物を取り扱うファクトリーショップで、自店の新しい顧客獲得へ、ユニークな素材(穀物)を活用した新しい開発のヒントを見つけてほしい。
流通ジャーナリスト 山本武道