「ニューマーケット創造に挑む」Online(5)
野菜の消費拡大へ機能性表示で新しいビジネスモデル創出を目指す
量販店や小売店、直売所の売り場に、「野菜・果物の栄養素の一般的な機能性表示に関するPOP表示マニュアル」に基づき製作されたPOPの掲出を希望する店舗での実証実験が始まる。日本ヘルスケア協会(JAHI)の『野菜で健康推進部会』が中心となって、2年半をかけて生活者の野菜摂取量を増やし国民の健康づくりをサポートするために準備を進めてきたサンドボックス制度による実証実験だ。店舗は公募し30店舗余りになるとみられるが、一般的な野菜・果物の機能を表示したPOPを掲示した売り場では、消費者ニーズ、優良誤認や売上げの変化が確認できるだけでなく、より機能性の高い野菜・果物が適正な価格設定で販売に結びつき、生産者の競争力や付加価値向上にも寄与できるのが狙い。「野菜摂取の意味、野菜・果実の鮮度、美味しさなどの知識普及を図る」として、野菜の消費拡大への新しいビジネスモデル創造も目標にしている。
総理と大臣から届いた新技術実証計画の認定書
2020年10月5日、一般財団法人(当時)日本ヘルスケア協会の今西信幸会長宛に1通の公文書が届いた。
公文書は菅義偉内閣総理大臣(当時)と野上浩太郎農林水産大臣(当時)の印鑑が押された「新技術等実施計画の認定書」。
まさに野菜・果物の機能表示の幕開けとなった。
同協会が、2020年9月11日付で、認定申請していた新技術等実施計画(サンドボックス制度)が、生産性向上特別措置法に適合することが認められた書。
この計画の目的は、野菜が持つ含有成分や、その一般的な機能性について表示モデルを明確に示し小売りの現場における適切な広告活動を促進し、生活者の自主的・合理的な選択を促すことで、野菜の摂取量を増やし国民の健康づくりに貢献することだ。
規制改革を推進するサンドボックス制度
サンドボックス制度とは、期間や参加者を限定し既存の規制の適用を受けることなく、新しい技術の実証を行える環境を整えることで、迅速な実証を可能とするとともに、得られた情報・資料を活用できるようにして規制改革を推進する仕組み。
2018年に施行された生産性向上特別措置法に基づき、新しい技術やビジネスモデルを用いた事業活動を促進するための制度だ。
サンドボックス提言の背景には、食を通じ日本国民の健康を高めるために、野菜摂取の量的拡大と質的向上を図ることを目的としている。
国民の健康を高めるため野菜摂取の量と質の向上を図る
野菜摂取量目標は1日に350gも実際には280g
「野菜の摂取量目標は1日に350g。しかし平均280gしか摂れていません。ですから野菜70g、果物は100gを今以上に摂る必要があります。野菜から摂る――つまり〝ベジファースト〟です。
ところが、いざ350gを摂るとなると、何をどのくらい食べたら良いのか解りにくいので、7色の野菜摂取の意味、もちろん野菜・果物の鮮度、美味しさ等の知識普及のために生活者や業界の方々を対象にセミナー開催をしてきました」と話すのは、日本ヘルスケア協会の「野菜で健康推進部会」の丹羽真清部会長。
そこで量販店や小売店、直売所の売場に「野菜・果物の栄養素の一般的な機能性表示に関するPOP表示マニュアル」に基づき製作されたPOPを売場に掲示し摂取量拡大を図ろうというもので、希望する店舗での実証実験が始まる。
野菜の活性酸素消去の測定法などの表示も
実証に参加する小売店では、マニュアルに基づいて作成したPOPに、野菜・果物の機能を表示し売場に掲示する。
具体的には、特定成分の一般的な機能性などを表示するほか、野菜の活性酸素消去を測定する方法や、特定の食品の成分含有量、測定値に関する表示を行う。
最終的には、消費者ニーズ、優良誤認性の確認、売上げの変化を確認し、次の項目を検証する。
店頭掲示/アンケートボード/アンケートボックス/店舗スタッフによる消費者ランダムアンケート/部会員による聞き取り調査/販売データ、POSデータ
保健所等の指摘、消費者からの質問に対しては、問題発生時の報告シートによる報告と対応後レポートを提出することになっている。
流通ジャーナリスト 山本武道
(「ヘルスライフビジネス」2020年12月1日号掲載)