志の高い組織として発展誓う/JACDS
2022年振り返り「ドラッグストアの専門性・質の向上に力を注ぐ」
日本チェーンドラッグストア(JACDS)は12月9日に、都内で記者会見を開催。会長の池野隆光氏は「抗原検査キットや解熱鎮痛剤の安定供給に努めたことで、店舗はもとより薬剤師、医薬品登録販売者、管理栄養士といった専門職の存在感が高まった。ドラッグストアへの期待が高まると同時に責任の重さを感じる。社会と生活者に貢献するチャネルとして求められるのはさらなる専門家の質の向上と、そのための道筋をJACDSが示していくことだ」と語り、ドラッグストア業界の2022年を振り返った。
「抗原検査キットOTC化は大きな一歩」
記者会見で池野隆光会長は2022年の社会情勢と業界の動きを振り返り、「新型コロナウイルス禍において、医療体制逼迫に対するセルフケアの重要性を店頭で啓発すると同時に、地域生活者へのニーズを十二分に満たすため、市販薬へとスイッチ化した新型コロナウイルス抗原検査キットの販売拡大、解熱鎮痛剤の安定供給に力を入れてきた。12月には、新型コロナとインフルエンザを同時に検査できる抗原検査キットが承認され、ますます店頭でのセルフチェックの重要性が広がっていくだろう」と話した。
そのうえで、「抗原検査キットの提供で、医療従事者としての薬剤師の存在感も高まった。今の子どもたちが大人になるころ、2040年には薬剤師が予防注射の担い手になっているような時代がくればいい。抗原検査キットのOTC化はその大きな一歩だ」と薬剤師の将来を展望した。
調剤・薬剤師について
「存在感高まるDgS薬剤師の質向上のために道筋を示すべき」
「ドラッグストアにおいて調剤併設店舗が非常に増えている。先の抗原検査キットの話にも及ぶが調剤業務が拡大していく中で、ドラッグストア薬剤師の質も問われている。正確かつ安心、安全な調剤業務は最重要であることは当然ながら、OTC医薬品や健康食品、サプリメントの飲み合わせの知識も必要になってきた。薬剤師の役割も少しずつ変化し、求められるものが増えてきていると感じる」と現状を俯瞰し、「その変化に対しJACDSとしてどう道筋を作っていくのか、あるいはどういった教育体制を構築していくのか。地域を支える薬剤師をどう育てていくのか、という考えをJACDSとして掲げていきたい」と姿勢を示した。
医薬品登録販売者について
「質の高い専門家として必要とされる存在に」
医薬品登録販売者の資質の向上にも言及した。
「薬剤師と同じように医薬品登録販売者の質も問われている。一部で医薬品登録販売者の不要論も出ているが、質が高ければ不要論は起こらないはずだ。仮に医薬品登録販売者というライセンスに固執せずとも、質が高ければその存在は失われることはない」と話し「ドラッグストアに限ったことではないが、チェーンストアが効率化を求めるために、専門スタッフの質を高めることに対しておろそかになっているのではないか。生活者に支持される存在として、医薬品登録販売者の職能発揮の場を確保するためにもさまざまな形で質を高める活動を進めていかなければならない」と課題を明らかにした。
「食と健康」と管理栄養士・栄養士
「管理栄養士らに選ばれる職能発揮の場であるべき」
ドラッグストアが進める「食と健康」の売場構築については「食の質が健康を保つ。健康の柱は食である。各省庁、保健所との折衝を重ねドラッグストアならではの『食と健康』の売場構築が進んだ」と評価しつつも課題もにじませた。
「『食と健康』を推進する管理栄養士、栄養士が在籍する店舗も増えてきたが、店頭において『管理栄養士がいますよ』『栄養相談ができますよ」という表示がなされていない。あるいは在籍時間が表記されておらず居る・居ないがわからない、といったことが起きている。このような状態では優秀な管理栄養士、栄養士を確保したとしても、職能発揮の場所としてドラッグストアが選ばれなくなるのではないか。薬剤師、医薬品登録販売者と同じく、彼ら・彼女らにも選ばれるドラッグストアであるべきだ」と語った。
環境に配慮したリサイクル社会への取り組み
「具体的なアクションで〝変えていく姿勢〟を示す」
さらに2023年も引き続き環境問題に取り組む姿勢を示した。
「ドラッグストアでの食品の取扱いが広がっているが、一方で食品ロスの対策も行っていかなければならない」とした上で、2022年に実施した食品ロス削減啓発キャンペーン等の活動を続けていく姿勢を示した。
生活者が訪れる店舗から、プラ削減など環境配慮のリサイクル社会をどのように提案していくかについて「例えばシャンプーは、購入チャネルとしてドラッグストアのシェアは圧倒的。シャンプーのプラ容器の回収・リサイクルは、一部でしか行われていない状況だが、これをどう変えていくことができるのか。紙容器に代わる、という可能性もある」と模索。JACDSと主要日用品メーカーによる空き容器の店頭回収「“地球とともに健康に”JACDSサーキュラーエコノミープロジェクト」の目的を語った。
そして「具体的なアクションをしなければ変わっていかない。〝変えていかなければならない〟とドラッグストアが率先して仕掛けていくべきだ」と使命感をにじませた。
小売業全体で「支えるべきは何か」を考える時代に
池野隆光会長はドラッグストア業界に向けられる期待と課題を示したうえで、「JACDSの顧問会によるロビー活動を通じ、高齢化社会を支えていくドラッグストアとして、こうあるべき、こうあってほしいという提言と要望をしっかりと投げかけていく」と健康的な社会生活支える一角としての責務を表し、「さらに業界の垣根を超えて小売団体とも連携していく。自分たちのエゴに囚われることなく、小売業が一丸となって支えるべきは何なのか、を模索する時代に入った。ドラッグストア業界は業界規模10兆円を目前にしている。今後あるいはコンビニを抜くかもしれない、ということであれば、それだけの社会的責任を感じざるを得ない。会長就任以来掲げてきた『尊敬される企業集団』たりえるため、なにより質の高い、志の高い組織として発展していきたい」と締めくくった。