ニューオリンズで健康自然食品の展示会を見る(48)
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ニューヨークを後にした一行はフィアデルフィアを経て、NNFAという業界団体主催の商品展示会が開かれるニューオリンズに入った。
主催のNNFAというのはNatural Nutritional Food Associationのことで、今ではNatural Product Associationという団体になっている。この団体名を日本語で直訳すると自然栄養食品協会ということになる。米国を代表する業界団体だというから“米国”を付けるとさらに長くなる。
「まあ全米栄養食品協会といった言い方が良いだろう」と編集長は言う。後で考えたら栄養士の団体と間違えそうで変な名称だが、鶴の一声でそう呼ぶことになった。この団体は米国で最も大きな規模を誇る自然食品や健康食品の専門店の業界団体で、米国全土に約1万店あると言われる専門店のほとんどが加盟しているという。ということは世界で一番大きな健康自然食品の業界団体ということになる。展示会は小売業の会員が製造企業や卸業者から製品を仕入れる商談の場だ。米国風に言うと“トレードショー”ということになるらしい。
ニューオリンズに着いた翌日、一行は現地の旅行会社のバスで巨大な展示会場に向かった。
「あの娘はルイジアナママ やってきたのはニューオリンズ」とJTBの小沢さんがおどけて歌い出すと、みんなが歓声を上げた。1960年代に日本ではロカビリーというものが流行した。小学校の頃だったが、この歌は飯田久彦という歌手が歌っていた。しかし、私としては「朝日のあたる家」の方が懐かしかった。中学の頃だった。アニマルズというイギリスのロックバンドのエリック・バートンの歌で流行った。The House of the Rising Sunだったが、尾藤イサオの日本語版で「オオ、ベイビー」とやられると、なんだか演歌のようにも聞こえた。
「There is a house in New Orleans They call the Rising Sun…」
つぶやきながら窓の外を見ていると会場に着いた。
巨大な展示会場で、入り口から全体を見渡すと遥か彼方まで展示のコマが続いて霞んで見える。ナチュラルフードという、オーガニック(有機)の素材で作られた加工食品がズラリと並んでいる。黄色、赤、黒などのトウモロコシを使ったチップス、アボカドのドレッシング、全粒小麦のパン、豆乳、小麦や大豆のたんぱくを使って作った肉もどき、豆乳のクリームスープ、ナッツ類、オレンジジュース、クランベリー、オーガニックの紅茶やコーヒーなどなど。
通常の食品にないものはない。すべてを集めればスーパーマーケットができそうだ。これらがすべて無農薬でオ-ガニックだというのだから驚きだ。展示コマを回るたびに次から次に商品の試食を手渡される。そうしているうちに、「これなら昼ご飯はいりませんねェ」というくらいお腹一杯になった。
さらに見てゆくと、Hein pure foodという会社が大きなスペースで出展していた。マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、シリアル、飲料など、この分野の総合食品企業のようだ。
「ベニバナ油がありますよ」と富田さんにいうと、「知らないの。こっちが本場だよ」という。なかでもHeinは代表的な会社の一つだそうだ。当時、創健社はすでに米国に現地法人のそうけんトレーディングという会社を出していた。後で思うと、heinは創健社のモデルのような会社だった。
しばらくすると、居なくなっていた編集長が戻ってきて「全米栄養食品協会の会長と会見ができるようになりました」と告げた。会場近くの事務局に行くと黒いワンピース姿の50代後半くらいの初老の女性がにこやかに私たちを待っていた。
(ヘルスライフビジネス2016年3月1日号「私の故旧忘れ得べき」本紙主幹・木村忠明)