【規制】明確な方向性が見えてこない一般健食広告規制(24)

2023年10月23日

※「ヘルスライフビジネス」2023年6月15日号掲載の記事です。                         昨年の4月から本年5月中旬までの薬機法による健康食品広告の効能効果に関する摘発事件の件数はゼロだった。摘発の激減傾向はこれだけでも明らかだが、5月末日に犬用健食を認知症予防や抗がん作用を標ぼうして人にも販売した容疑、6月6日にミネラル水をインフルエンザに効くと標ぼうして販売した容疑での薬機法の摘発が報じられており、まったくゼロになっているわけではないことがわかる。これらの摘発例と筆者が続けている全国紙の健食広告掲載状況に対する定点観察結果に基づき、一般健食広告の規制の動向について分析・検討し、筆者の見解を述べる。

一般健食広告の摘発と全国紙審査事例の検討

現時点での一般健食広告規制の状況

 機能性表示食品(キノウ)のAから始まった届出番号は、Hまでに至っている。キノウに先行したトクホと栄養機能食品(エイキ)の市場が活性化していないのに比べ、キノウ市場の隆盛は言うまでもない。

トクホ・エイキ・キノウで構成される保健機能食品の実態は、主体はキノウ単独にあると言っても過言ではない。 

 消費者庁はキノウ制度創設に伴い、保健機能食品のみを健康食品として行くことを表明した。同庁の狙いは、一般健食を保健機能食品に吸収し、健康食品として制度化することにあったと筆者は理解していた。

一般健食広告の規制は以上のような行政側の目的意識によって行われてきたことになる。

 一般健食広告の摘発と全国紙の一般健食広告に対する審査の状況は、規制の実態を反映していると思われるので、それから同庁の狙いどおりに進捗しているかを検討してみたい。

 結論から言えば、一般健食広告規制は消費者庁の意向だけで行われてはいないようで、明確な方向性が見えないというのが、率直な感想である。

今回の一般健食広告摘発の分析と検討

5月31日の警視庁生活環境課による薬機法の摘発は、犬用健食を認知症予防や抗がん作用を標ぼうして人にも販売したものである。容疑者はペットショップの運営会社の社長などで、1億円以上を売り上げていたとされている。ペット用の健食を人の難病への効果を標ぼう・販売していたことと、売上の多いことから被害者が多いとして摘発されたと推測できる。

6月6日の千葉県警の薬機法による、ミネラル水をインフルエンザに効くと標ぼうして販売した容疑の摘発も、5年ほどで約4億円を売り上げていたとされている。インフルエンザに関する標ぼうと売上額が摘発理由であることは、警視庁の摘発と同様の事件である。

摘発された容疑者はいずれも一般健食の規制を知った上で、真面目に販売していたとは思えない。従って、このような摘発は、キノウ市場の拡大で、一般健食広告の規制がどうなるか、といった問題と無関係と言わざるを得ない。

全国紙など6紙の一般健食広告掲載量の傾向

 広告規制での×表現の具体例は、行政側から例示されているし、処分や摘発例からも知ることができる。しかし、○表現の具体例について、行政側の例示でわかることには限界がある。筆者は全国紙5紙とブロック紙1紙に掲載される健食広告を継続して比較することで、○表現の具体例を調べ、各紙の審査基準の変動などから、規制の動向を観察している。

 キノウ制度創設以降、出稿量におけるキノウ広告の増加と一般健食広告の減少は当然だが、キノウ広告の出稿量が圧倒的に多いというわけではないと筆者はみている。

 もちろん、一般健食として永く販売されていたものがキノウになった例は多い。しかし、それでも一般健食広告が目立って減少しているとは言えない。6紙での保健機能食品と一般健食の出稿・掲載量を比較すると、大まかな計測ではあるが、両者は現時点で拮抗しており、一般健食広告の減少傾向が継続しているとは、筆者には思えない。

 最終的には、一般健食はキノウを中心とする保健機能食品に吸収されることになるとしても、それはかなり先のことになると筆者はみている。

一般健食広告規制はこれからどうなるのか

 消費者庁の意図によれば「いわゆる健康食品」から「いわゆる」を取って「健康食品」として制度化されることになる。

しかし、現状では、それが厚労省など他の行政庁も一致していることなのか、明確とはいえない。

 そもそも、保健機能食品=健康食品というのは消費者庁が同庁の見解として示したものであり、法令の規定ではない。当然、他の省庁がそれに縛られるわけではない。

 まったくの筆者の推測であるが、厚老省の一部は、この消費者庁の見解に反対していると思われる。保健機能食品=健康食品ということになれば保健機能食品は制度として、現状よりも明確なものになり、その分だけ、医薬品の力が弱まることが危惧されているのではないだろうか。

そのような思惑からすれば、一般健食がなくなるよりも、現状のままのほうが利益になるはずである。いずれにしても、筆者には、一般健食広告規制の明確な方向性が見えてこない。

 46通知の法例解釈では一般健食の健康維持表現は○になる。従って、6月6日の読売新聞が掲載している「きちんと休んで朝はスッキリ」「元気で、10歳は若く見られます」「夫婦で充実した毎日です」といった表現は○ということになる。


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