【規制】機能性表示食品制度が広告規制の実態を変えた(32)

2024年2月14日

※「ヘルスライフビジネス」2023年10月15日号掲載の記事です。                       8月末の京都府警による一般健食広告の摘発に関するその後の報道は10月になってもない。また、健食広告に対する処分や摘発のそれ以外の報道も見当たらない。そこで今回は、様々な理由によって極めて複雑な健食広告規制の実態の中で規制が薬機法から景表法へシフトされているという筆者の私見に沿いながら、健食広告の健食の広告主として留意するべき点を検討してみたい。10月1日からの新しいステルスマーケティング規制も、来年末から始まる不当表示への直罰の適用も健食広告だけが対象になるわけではない。しかし、大きな影響を受けることは間違いない。

健食の広告規制における現時点での広告主側の留意点

キノウ制度で広告規制のなにが変わったのか

健康食品(健食)広告の規制に関する判断基準は昭和46年に当時の厚生省が薬事法に基づいてはじめて公表し、46通知と呼ばれている。

平成27年に機能性表示食品(キノウ)が食品表示法に基づいて創設され、平成22年創設の消費者庁が所管するようになるまでの44年間は、健食広告は薬事法(平成25年から薬機法)を中心に規制されてきた。

 キノウの創設を契機にして、法令上の根拠があるキノウ、トクホ、栄養機能食品(エイキ)が健食であり、それ以外のものは従来どおり「いわゆる」がついたものであるというのが、消費者庁の判断であるが、ここでは一般健食として、キノウなどの健食と区別する

一般健食が薬機法で厳しく規制されてきた人体の「肝臓」などの部位名や「免疫」「便通」などの機能に関する用語を使った健康の維持・増進に関する広告表現が、キノウなどの健食では可能になったのである。これで規制が変わらないわけがない。しかし、その意味がまだ十分に認識されていないと思われる。

景表法の規制はどのように変わったか

 キノウ創設以前までは健食広告が主に薬機法で規制されてきたことは上述のとおりである。

しかし、キノウ以降の健食広告が薬機法で規制されることはなく、景表法で規制されることになった。一般健食広告の薬機法による規制は残ったが「便通や免疫機能の改善」という一般健食の広告表現が、医薬品的表現とキノウの類似表現の両方に該当することになったわけである。

 薬機法で摘発しても、裁判で有罪になるとは限らなくなれば、摘発をためらう場合が生じても不思議ではない。そのために薬機法の摘発から景表法の処分へのシフトが生じていると、筆者は推測している。

 キノウの創設だけが原因でないとしても、景表法の規制強化が続いており、健食・一般健食広告のどちらも対象になる場合が増えている。その中から、ステルスマーケティング(ステマ)規制と直罰規定の新設の2点に絞り、次項で広告主としての留意点を検討したい。

広告会社が○と言っても×の場合があり得る

 10月1日から景表法によるステマ規制が始まった。広告ではないように装ったウェブ上の個人の体験談や新聞・雑誌の記事が広告と判断されると措置命令の対象になる。

ここでは規制基準に関する解説は割愛させて頂き、広告主として留意するべき≪広告会社や媒体社から記事の扱いになるとして広告出稿を勧誘された場合の留意点≫について検討する。

 広告会社などがこのような営業を行うのは、本来の記事であれば規制されないからである。これは10月以降も変わらない。そのために記事を装った「記事風広告」が利用されるわけである。

 記事と記事風広告の最も簡単な区別は、記事であれば、情報の提供だけで、広告代金を支払う必要のない点である。代金が必要なものは広告であり、10月1日からの規制に従い、広告である旨を明示しても、そこに医薬品的表現や虚偽誇大表現があれば、当然規制対象となる。

 広告会社や媒体社が記事風広告の規制されることを知っていても、景表法では責任か問われないために、広告主を騙すことがないとは言えない。

広告主としてはその点に留意が必要である。

景表法に直罰が規定されることになった意味

 ステマ規制とは別に景表法の改正が行われ、改正法は本年5月10日に国会で可決、17日に公布され、1年半以内に施行される。従って、遅くとも来年末には改正法の規制が始まる

改正事項のうち、広告主への影響がもっとも大きいと思われるのは、直罰規定の新設であろう。

 景表法の措置命令は行政処分であって、刑事処分ではない。つまり、警察沙汰になるのは、措置命令に従わない場合であり、命令に従っていれば犯罪とはされない。

 行政処分と刑事処分に大差はないと考えているとすれば、大きな誤解である。犯罪であるとないとでは、社会的な評価がまったく異なる。高額な課徴金の支払いが命じられたとしても、刑事罰である罰金とは意味がまったく異なるのである。

 今回、新設されるのは100万円以下の罰金のみなので、体罰もある薬機法よりも量刑は軽いが、刑事罰であることに変わりはない。つまり、警察が必要と判断すれば薬機法と同じように逮捕や家宅捜索といった強制捜査が行われるはずで、それをマスコミが報道すれば薬機法と同様に社会的な制裁となる。景表法にシフトしても、罰の実態を変えないようにすることが、改正の目的のように思われる。


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