【規制】糖質カット炊飯器広告の分析(34)

2024年3月6日

※「ヘルスライフビジネス」2023年11月15日号掲載の記事です。                       消費者庁は10月31日に糖質カット炊飯器の販売事業者4社への景表法による措置命令の内容を公表した。11月2日には同じく景表法の事件だが、代金未納のない消費者に代金請求を繰り返していた通販業者に対する消費者団体訴訟で消費者団体が勝訴した旨を消費者庁が公表している。これ以外には健康訴求広告に関する規制情報は見当たらない。そこで今回は糖質カット炊飯器の広告に対する処分について解説したい。この処分は家電製品広告の事件だが、器具に限らず健食を含めた健康訴求広告全般での糖質に関連する広告表現の規制基準を含め解説することにした。

糖質に関する広告表現規制での判断基準の分析と検討

健食広告の主な規制対象は肥満や血糖値改善

糖質に関する広告表現規制の推移

 糖質とは炭水化物から食物繊維を除いたもので、摂取して体内で吸収されるとエネルギー源となる栄養素である。そうであるから身体に必須のものだが、摂りすぎれば肥満や血糖値上昇の原因になる。食に不自由しなくなった現代では、食欲を満足させながら、肥満や血糖値の上昇を抑制したいという人々の要求は極めて強い。

そのためにダイエットしたい人や糖尿病を防ぎたい人に向けた、糖質の過剰摂取や体内での吸収を抑制する商品の市場が拡大を続けている。

したがって、それらの商品の広告表現は、痩身や血糖値上昇抑制の効果を標ぼうするものになるのは当然といえる。

しかし、もちろん、そのような広告は厳しく規制され続けてきたのであり、規制に抵触しない表現の工夫とそれに対する新たな規制が繰り返えされてきた。

 このような表現の工夫と新たな規制の繰り返しに見られる糖質に関する健康訴求広告の規制は、規制全般の中で常に優先されてきたというのが筆者の実感である。

糖質カット炊飯器広告の分析と検討

 10月31日公表の措置命令の対象になったのは4社の「糖質カット炊飯器」の広告表現である。

4社は自社ウェブサイトなどで、次のような表現を広告に使っていた。

「減らす 控える 落とす 美味しさそのまま糖質45%カット炊飯器」

「(糖質45%カット炊飯器の)一番の特徴である糖質カットを実現したのはその構造です。~お米から発生する糖質がお米に付着しないように、蒸し器のような構造をしています。これによって、炊飯時に発生した糖質を落とすことが可能になりました」

「~お米から出た糖質を含んだ水を、独自の高性能自動排出バルブを通して下部のトレーに流すことで、糖質最大54%カットを実現~」

 広告が強調しているのは、炊飯器の構造により米の糖質が減少するということで、これが事実であれば処分されることはなかったことになる。

 器具と食品では広告規制の基準が異なる。炊飯器の糖質カット機能に根拠があったとしても「痩身や血糖値を下げる効果のある炊飯器」といった標ぼうをしたのであれば景表法と薬機法の規制対象になる。

キノウで変わった糖質に関する広告規制

 昭和60年に景表法と薬事法(当時)による共通の規制基準として公表された「痩身効果等を標ぼうするいわゆる健康食品の広告等について」という通知によって、次のような痩身効果を標ぼうする広告表現は、厳しく規制されてきた。

糖が脂肪に合成されるのを抑え、脂肪を体外に排出する」「飲むだけで、脂肪を落とし、短期間で効果を発揮する

しかし、機能性表示食品(キノウ)制度によって次のような機能性の広告での表現が可能になったわけである

食事の糖や脂肪の吸収を抑える」「食後の血糖値と血中中性脂肪値の上昇を抑える

 従って、届出表示の範囲内であるとして、次のような表現が実際に使われている

「9割が知らない。体重とおなかの脂肪を減らすのを助ける方法」「えっ、まだ知らない?体重を減らすのを助ける方法」

「BMIが高めの方のおなかの脂肪・体重・ウェスト周囲径を減らす」

糖質に関する広告の実務上の留意点

 今回の「糖質カット炊飯器」に関する4社への措置命令は、この炊飯器に糖質を減らす性能が認められなかったことによる処分である。4社は効能効果を標ぼうしなかったのだから処分されないと考えたのかも知れない。確かに、薬機法の規制であれば効能効果を標ぼうしなければ規制対象外になる。

しかし、景表法では「糖質が減る」という標ぼうに根拠がなく減らなかったら、優良誤認表示として規制される。

 ただ、糖質を減少させる調理方法に根拠があれば「その調理で糖質をカットできる」という表現は規制対象外のはずだ。したがって、その調理に使用する器具の広告で、糖質をカットする調理方法を紹介しても、規制されないと思われる。

 今回の処分は、国民生活センターのこれらの炊飯器への調査結果が契機となったが、調査はこの炊飯器に対する250件の相談から行われた。これは、糖質カットに対する消費者の関心の高さを示している。一般健食でのキノウの広告表現を明示・暗示する表現は当然、景表法の規制対象になる。効能効果の標ぼうでなく、単に「糖質の吸収を抑制する」という表現であっても、景表法の規制対象になり得ることに留意するべきだろう。


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