ロート製薬が天藤製薬を子会社化
ロート製薬がOTC領域における事業拡大を目的として、天藤製薬を子会社化する。2/3超の持分を取得することを決議し、6月8日付けで株式譲渡契約を締結。今年8月31日までの譲渡完了を目指す。創業家などから議決権割合で67.19%の株式を取得し筆頭株主となる。買収金額は90億円程度とみられ、株式の3割を持つ武田薬品工業は保有を続けるという。
これまで天藤製薬は武田薬品工業のグループ企業として、痔治療OTC医薬品におけるカテゴリーナンバーワンブランドの「ボラギノール」をメインとしたOTC医薬品を供給してきた。「ボラギノール」の歴史は約100年にも及ぶ。
だが、医療用医薬品を取り巻くグローバルな経営環境が激変し、グループトップである武田薬品工業は、アリナミンなどOTC医薬品を供給するコンシューマーヘルスケア分野を武田コンシューマーヘルスケアとして分社化、現在は完全に切り離しアリナミン製薬として今年新たなスタートを切り、武田薬品工業本体は医療医薬品分野に事業を集中させている。
今回のロート製薬の天藤製薬子会社化はこの延長上にあるのと同時に、国内だけでなく海外においてもOTC医薬品領域を強化したいロート製薬のニーズが合致したものと考えられる。現在OTC医薬品市場は、インバウンド消失と新型コロナウイルスの影響で、シュリンクしているものの、超高齢社会における社会保障費削減やレギュレーションのハーモナイゼーションが期待されるASEANへの展開を念頭におくと、中長期スパンでは社会的ニーズ合致や国際的な動きによって広がりも予測される。
特に、高齢者の排便問題は非常に深刻であり、在宅医療の現場では繰り返す便秘から痔に発展することも多くある。しかしながら、現場にはなかなか商品が行き届いていない状況となっている。この消費者のニーズをどのように拾い上げ、商品を現場まで落とし込んでいくのか。こうした観点からも、武田からロートに販路が変わる「ボラギノール」は非常に興味深いと言える。「ボラギーノール」がマーケティングを含めどのような進化を遂げるのか、ドラッグストア業界は注目すべきだろう。
現在OTC医薬品メーカーのシェアトップは大正製薬であるが、同社は直販メーカー。卸売業を介したOTC医薬品メーカーではロート製薬がトップとなっている。ちなみに、元武田コンシューマーヘルスケア社長の杉本雅史氏は、現在ロート製薬の社長を務めている。
以下杉本社長のコメント
「長い伝統を持ち、顧客からの確かな信用に支えられた天藤製薬の痔疾用剤事業を引き継ぐことに大きな社会的意義を感じています。ロート製薬は、2030年のビジョンのひとつとしてOTC医薬品のリーディングカンパニーになることを目指しており、天藤製薬製品はその実現の大きな一歩となるだけでなく、弊社の海外ネットワークを通じて、子会社の販売網やマーケティングノウハウを活用し、大きく成長させることで、更に事業拡大を図り、将来的には世界中のお客様にお届けし喜んでいただけるものと考えています」