【規制】事前の警告の軽視・無視が処分の原因に(41)

2024年7月22日

※「ヘルスライフビジネス」2024年3月1日号掲載の記事です。                        2月24日の時点で一般健食広告の薬機法による摘発事件の報道は見当たらない。景表法の措置命令は1月31日に除菌製品の広告に関して4社に、2月8日に糖質カット炊飯器の広告に関して4社に行われた旨が公表されている。いずれも健康食品広告の事例ではないが、繰り返して処分されているものである。特に後者は昨年の10月31日に別の4社の処分が公表されたばかりで、3ヵ月後に同様の炊飯器に関する処分が行われており、類似の違反を抑止する効果がなかったことになる。それはぜなのか、前回と今回の処分を比較・分析しながら、留意点を検討したい。

3ヵ月後に同じような処分が行われた事例に関する検討

規制情報理解の軽視が処分につながった事例

 令和6年2月8日公表の4社の処分で、対象になった広告のウエブサイトでの掲載時期は次の通りである。

ニトリ社 令和5年4月~8月

Areti社 令和5年5月~9月

リソウジャパン社 令和5年5月~9月

AINX社 令和5年3月

 つまり、処分された4社の広告は、いずれも昨年の10月31に公表された処分の以前に掲載されていたものであることがわかる。

 また、処分されたニトリ社の広告表現を整理・要約すると、次のようになる

「糖質カット機能がない炊飯器と機能のある自社の炊飯器のご飯100gあたりの糖質を比較すると機能のない炊飯器の糖質が43gだが、自社の炊飯器は22.4gで、糖質を約48%カットする」

 処分の理由は単に「糖質が減少する」ことを強調したからでなく「糖質を約48%カット」のような具体的な効果の表現の根拠が問題にされた点であると理解できる。

前回の処分での広告表現の分析と検討

 令和5年10月31日公表の糖質カット炊飯器販売事業者4社の処分での対象広告掲載媒体と時期は次の通りである。

forty-four社 令和4年9月29日、10月11の自社サイト

ソウイジャパン社 令和4年10月18日の自社サイト

EPEIOS JAPAN社 令和4年9月29日の自社サイト

HR貿易社 令和4年10月11日の自社サイト、令和3年7月1日のテレビ番組、令和4年1月19日のテレビ番組

最初の4社の処分広告は、今回の処分広告が掲載されていた時期の4ヶ月以上前に掲載されたものが対象になり、それが令和5年10月31日に公表されたわけである。

処分対象になった表現はforty-four社は「糖質45%カット炊飯器」ソウイジャパン社は「糖質最大54%カットを実現」EPEIOS JAPAN社は「糖質カッ率ト54%を実現」HR貿易社は「糖質44%カット、カロリー43%カット」であり、具体的な数値による効果の強調が規制されている。

短期間に同様の広告が別けて処分された理由

 令和5年10月と令和6年2月の処分について、まず広告表現から検討してみよう。

 どちらの場合も味を変えないで、肥満などの原因になる糖質を低減させる炊飯器の効果を48%カットのように具体的な数値を示して強調したことが処分理由であったと考えられる。

処分の対象にならず、処分後でもウェブ上に掲載されている、次のようなLOCABO社の広告表現と比較すると、処分の理由がわかる。

糖質低減実現のヒミツ」「お米のデンプンがお湯に溶け出す」「お米のデンプンは60℃前後から糊化現象が起こり、お湯へ溶け出します」「毎日の食事を美味しく、ヘルシーに

 炊飯器で糖質が減少すること自体ではなく、根拠のない数値の標ぼうへの処分であったことがわかる。わからないのは、短期間の間になぜ2回に分けて処分されたのかという点である。

 広告の掲載時期からみて、8社の処分が2回に分けて公表されているのは、理由は公表されていないが、消費者庁側に事務上の都合などがあったためではないかと筆者は推測している。

2回の処分から実務上なにを留意するべきか

 最初の処分の公表が令和5年10月31日ではなく、令和5年3月までに行うことは、対象広告の掲載時期からすると、可能だったはずである。ニトリ社などがそれを参考にしていれば、処分はなかったかもしれない。

 もっとも、国民生活センターは令和5年3月15に市販の5銘柄の糖質カット炊飯器のテスト結果を「糖質を低減できるとうたった電気炊飯器の実際」という文書で公表し「5銘柄中4銘柄で、広告等でうたわれていた糖質の低減率を満たさないと考えられ、これらは景品表示法上問題となるおそれがある」と警告している。

 従って、ニトリ社の場合、実情はわからず筆者の推測にすぎないが、令和5年4月~8月に掲載した処分広告は3月の警告を無視して出稿されたことになる。国民生活センターの警告を、不祥事防止に役立てなかったわけである。

 また、処分された8社は炊飯器の販売だけをしていたのであれば、製造会社から製品の機能に関する資料が渡されていたはずである。そもそも、

8社がこの資料を適切に理解し対応していれば、処分は避けられたのではないだろうか。これが今回の処分での最大の留意点のように思われる。


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