【規制】表現の工夫が暗示とされ規制が追いかけている(42)

2024年8月14日

※「ヘルスライフビジネス」2024年3月15日号掲載の記事です。                        3月11日の時点で一般健食広告への摘発事件の報道は見当たらない。景表法の措置命令は2月29日以降5件出されているが、いずれも健食に関するものではない。健食広告ではメタボメ茶の広告に課徴金納付命令が3月6日に、令和5年10月~12月間のインターネットでの健康食品等の虚偽・誇大表示の監視結果が7日に公表されているが、ここでのその解説は割愛し、暗示表現について検討することにする。暗示表現の判断基準は46通知などに例示されているが、それらの基準では現状の実務において判断に困ることが多い。それにどう対応するべきか私見を述べる。

暗示表現の事例に基づく○×の判断基準に関する検討

53年前に示された暗示表現に関する規制基準

 健康食品の広告表現が医薬品的効能効果になる判断基準は、53年前の昭和46年に、46通知と呼ばれている当時の厚生省薬務局長通知として初めて示された。そこでは、

病気の治療や予防に関するすべての表現の他に「若返る」「自然治癒力が増す」や「健胃整腸」「病中・病後に」などの医薬品の効能効果として使われている表現が「身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効能効果」として医薬品的効能効果になるとされた。これらは例であり、この他の示されていないものもすべて規制対象となる。

 以上が明示表現であるが、これを暗示する表現も同じように規制されるとして、該当する例が示された。「不老長寿」「不死源」といった商品名から漢方医学で使われる用語などが例示されているが、いずれも医薬品的な意味のあることがわかるもので、判断に困るというものではなかった。昭和62年には46通知を補足する課長通知が出されたが、内容に変わりはなかった。

「すっきり」「さらさら」の○×に関する混乱

このように、昭和62年までの暗示表現に関する規制基準で、広告実務が混乱するような事件は、筆者の知る限りではなかったが、平成19年4月になって混乱する事件が起こった。

この年の5月の連休明けごろから「すっきり」さらさら」「ぬくぬく」などの用語が健食広告に使えなくなるという噂で業界中の大騒動が勃発したのである。騒ぎの発端になったのは、平成19年4月13日付けで厚労省の広告専門官から発出された事務連絡のつぎのような内容であった。

そこには、販売名に効能効果を用いた製品に対して改善を要請したことと同様の販売名の使用を90日の猶予期間後に規制するとして、主要な健食会社10社の社名と共に「快視力」「快眠」「ぜんりつ」「抗酸」「すっきり」「さらさら」など66用語が記載されていた。

快視力」や「快眠」は明示表現と言えるし、「ぜんりつ」「抗酸」も暗示の意味が明確で規制の理由がわかるとしても「すっきり」「ぬくぬくなどの用語が規制されることに、業界は衝撃を受けたわけである。

暗示表現を総合的に判断することの問題点

 しかし、結局、事務連絡の記載が不十分であり、少なくとも「すっきり」「さらさらなどが単独で規制されるわけではないことがわかるにつれて、騒動は次第に鎮静した。この後に創設された消費者庁も、健食広告の規制は広告全体を総合的に行い、言葉狩りをするわけではないことの強調に努めた。

 だが、広告全体を総合的に規制すると言っても、例えば「中高年男性のスッキリしない悩みに」などの明確な判断基準が例示されているわけではなく、このような暗示表現の○×の判断が実務上問題になってきたことはリードで述べたとおりである。

 もっとも、平成29年3月9日に公表されたアスタキサンチン素材の一般健食広告への措置命令では「ボンヤリ・にごった感じに」「ようやく出会えたクリアでスッキリ」「新聞・読書楽しみたいかたに⇒目からウロコの実感力」などの表現が処分されており、判断基準にできることになった。

そこで、このような表現による○×の判断基準について事項で検討しよう。

暗示表現の○×の判断基準に関する検討

 46通知に示された暗示表現の例は、その当時に使われていた広告表現であったと言える。それに変わる表現の工夫を追いかけて規制が行われ、平成29年の措置命令の例が、現時点での最新の判断基準になっている。

 処分の対象になった広告での効果に関する最大の強調表現は「ボンヤリ・にごった感じに」であり、それと「新聞・読書 楽しみたい方に⇒目からウロコの実感力」が連動して一体となっているように読める。

 つまり、この強調表現は「新聞・読書を楽しみたい人の、目のボンヤリ・にごった状態」が、この健食の摂取で改善することを暗示しており、それが処分理由であると筆者は理解している。

 これが白内障のような防気改善の暗示であれば景表法だけでなく薬機法の摘発対象にもなる。そこまでの暗示とすることは無理なので、目の機能性改善に関する暗示として景表法で処分されたと思われる。

ボンヤリ・にごった感じ」が目の症状で、その改善を意味していると判読できることで処分されたのであれば、前項で紹介した「中高年男性のスッキリしない悩みに」が処分対象になるか否かも頻尿の改善を暗示する表現が他にどれだけ使われているかで判断されるはずである。


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