【規制】№1の根拠を表示することで○と主張できる(43)

2024年8月21日

※「ヘルスライフビジネス」2024年4月1日号掲載の記事です。 小林製薬の機能性表示食品に関する健康被害事件は、市場全体への深刻な影響が避けられない事態にまで拡大している。商品自体に原因があってもなくても、健康被害はいつでも起こり得る。危機管理の重要性は言うまでもないが、広告の問題ではないので、ここでは№1表示の規制について解説する。消費者庁は2月末から3月にかけて景表法の措置命令を5件、特商法の業務停止命令などを1件公表しているが、すべて№1表示に関する処分である。消費者庁長官は3月21日に№1表示の実態調査を実施して、今秋に公表する旨を表明しており、これらについて検討する。

 

広告における№1表示の規制基準に関する分析と検討

今回の№1表示への処分の内容と検討

 2月29日、3月1日に2件、3月5日、3月7日と立て続けに公表された5件の景表法に基づく措置命令は、太陽光発電、旅行ガイド、住宅建設、家庭用蓄電池の商品や施工の提供に関する役務の広告表現での№1表示に対するものである。

 処分された表現は「アフターフォロー満足度№1、コストパフォーマンス満足度 №1、工事品質満足度 №1」といったもので、対象になったのは5件とも同じような表現である。

 これらの表現が優良誤認表示と認定されたのは5件とも同様の理由であり、次のように整理・要約して紹介する。

「各広告主が調査を委託した事業者の調査は、当該社とそれ以外の他社の役務について、実際に利用したことがある者か確認することなく、9社を任意に選択して対比し、各社のウェブサイトの印象を問うものであり、客観的でなく、調査結果を正確・適切に引用しているものでもなかった」

つまり、№1の根拠のなかったことが処分理由であったわけである。

通販広告での№1表示などへの処分の検討

 このように、№1表示に関して景表法による5件の措置命令が行われた一方で、健食の通販会社である「株式会社サン」のダイエットドリンク広告における№1表示が、特商法12条の誇大広告に該当するとして業務停止命令の対象になったことが3月15日に公表されている。

 誇大広告の内容は、自社ウェブサイトのランディングページで「10冠達成」「女性に人気のダイエットドリンク№1」「ダイエット実感値の高いダイエットドリンク№1」「トレーニング後に飲みたいダイエットドリンク№1」などで、この会社が調査を委託した事業者による調査が、公平・公正な方法で行われたものではなかったというのが処分理由になっている。

 表現内容も処分理由も景表法の処分と似ているが、なぜ業務停止命令であったのか、説明がなくわからない。筆者は「申込みの撤回・解除に関する事項の不表示」などの表示義務違反も処分の理由とされているので、これが措置命令になじまないから併せて業務停止命令や業務禁止命令が適用されたと推測している。

公取の№1表示に関する規制基準の検討

 以上は、この2月末から3月日にかけて行われた処分であり、事態を重視した消費者庁は、長官が3月21日の記者会見で№1表示の実態調査を実施して、今秋に公表する旨を表明している。しかし、№1表示に関する規制基準になる調査報告と処分事例があるので、それを紹介して、内容を検討しよう。

 調査報告は「№1表示に関する実態調査報告書」という表題で、公正取引委員会が平成20年6月に公表していて、現在でもウェブ上で閲覧できる。新たな調査報告が公表されるまでは、これを参考にできるはずだ。

紙数の都合で要点だけを紹介すると①客観的調査に基づき、②直近の調査結果により、商品等の範囲、地理的範囲、調査期間・時点、調査の出典を明瞭に表示することが必要とされている。つまり、この①と②が満たされていれば、№1表示の広告での使用が可能になるわけである。

 なお、昨年の12月19日公表の株式会社ハハハラボへの措置命令も№1表示が対象になっているが、処分理由が今回の事例と類似しているので、解説は割愛させて頂く。

№1表示の健食広告使用に関する留意点

 今回の景表法5例、特商法1例、昨年12月の景表法1例の№1表示に関する処分は、いずれも公取の№1表示に関する規制基準に照らして客観的調査とは言えず、№1であることの根拠がないと判断されたことが処分理由と考えられる。

今回の景表法の処分5例に関する公表資料を検討すると、処分理由が類似していて、広告主が調査を依頼した調査会社が同一であったかのような印象を受ける。公表がないので、その点は確認できないが、いずれも調査会社の調査方法に問題のあったことは間違いないようだ。

処分の公表資料を検討するだけで、調査会社が№1の結果だけを求めて安易な調査を行い、№1の結果が欲しい広告主が安易にその調査結果を信じてそれを使用したことが推測できる。

 従って、すでに例示されている公取などの規制基準を理解していないような調査会社への依頼と、そのような依頼をするに至った広告主自身の規制基準の不理解が今回の処分の原因であったと言える。少なくとも現時点では、公取の規制基準を遵守すれば訴求力の強い№1表示が可能なはずで、その理解が重要である。


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