【解説】2025年の機能性表示食品制度を探る㊤
創設10年目で制度は過渡期に
昨年3月に発生した小林製薬の紅麹製品による健康被害問題を契機に、機能性表示食品制度のあり方が大きく見直されることになった。昨年9月1日には制度見直しを盛り込んだ改正食品表示基準が施行され、昨年末にはGMPの指針である「3.11通知」が改正。届出事業者は、紅麹問題以前から決まっていた「PRISMA声明2020」への準拠を含め、一連の制度見直しへの対応を迫られている。創設から10年で制度が過渡期を迎える中、2025年の機能性表示食品制度はどうなるのか。「制度見直し」「市場性」「製品開発」という三つの視点から展望してみる。
「制度見直し」PRISMA2020への対応は難航
小林製薬の紅麹製品による健康被害が発覚すると、その矛先は機能性表示食品制度自体に向けられ、全6回にわたる「機能性表示食品制度を巡る検討会」を経て5月末には政府の対応方針が示された。9月1日にはこれらを踏まえた食品表示基準が改正され、健康被害情報の報告が即日義務化となったほか、サプリメント形状の製品におけるGMP管理の要件化、表示内容の見直しなどが盛り込まれることとなった。
健康被害情報の報告につてはすでに義務化されており、医師によって健康被害との因果関係が否定できないとの診断が概ね30日以内に2例以上(重篤な症状の場合は1例)報告された場合、その情報を知った日から15日以内に保健所などに報告する必要がある。
さらに、今年4月1日以降の届出では、システマティックレビューで機能性を評価する場合「PRISMA声明2020」への準拠が必須になるほか、新規成分に関しては慎重な届出チェックを行うため、特例として届出の期限が販売日の120営業日前までとされた。
GMPへの準拠やパッケージの表示内容見直しについては来年9月1日まで移行期間が設けられたものの、届出事業者にとっては対応しなければならない課題が山積している状態だ。
特にPRISMA2020への対応は非常に難航しており、届出事業者からは「差し戻しのたびに違う箇所が指摘を受けた」「過去に受理実績のある届出内容でも差し戻された」といった声も聞かれている。過去に届出された製品に関しては直ちに届出内容の修正や撤回をする必要はないが、届出内容を修正する際にはPRISMA2020への準拠が必要となる。
完全移行へのタイムリミットが今年3月末に迫る中、届出事業者からは〝諦め〟に近い声も出始めており、このままだと4月以降の届出件数が激減する可能性もある。
機能性表示食品制度の創設から運用に携わってきた大阪大学教授の森下竜一氏は「PRISMA2020については消費者庁と業界団体で継続して話し合いが行われており、最低限盛り込むべき内容をQ&Aで示す方向だ。その頃には届出する事業者とチェックする消費者庁の双方がPRISMA2020に慣れてくると思うので、届出件数も安定するのでは」と展望。「届出へのハードルが高まったことをネガティブに捉えるのではなく、制度自体の信用を向上させるためだと前向きに捉えてほしい」とした。
GMP正で「微生物等関連原材料」の分析も
昨年末にはGMPのガイドラインである「3.11通知」が改正され、錠剤・カプセルなどサプリメント形状の製品に微生物など(藻類を含む)の培養または発酵工程を経て生産される原材料 (微生物等関連原材料)を使用する場合は製造工場で受け入れる際の規格を設定し、ロットごとに分析などで同等性・同質性を確保し、製品標準書に記載することが明記された。
「微生物等関連原材料」に該当するか否かは通知内のフローチャートを用いて確認でき、乳酸菌・ビフィズス菌は「通常の食生活において多くの食品から摂取している」との理由で適用範囲外とされた一方、「味噌・醤油・ヨーグルト・納豆などの一般的な発酵食品由来の原材料」「土壌菌など菌を培養したもの」「藻類」「キノコの菌糸体」などが該当する可能性がある。
産業界からは「分析にかかる手間やコストは誰が負担するのか」「天然発酵エキスなど同等性の証明が難しい原材料はどうすれば良いのか」といった声もあり、今後の対応が注目されている。
これについて岐阜医療科学大学教授の宗林さおり氏は「機能性表示食品の場合は関与成分が明確に設定されているため、パターン分析で同等性を確認することが求められる。エキスや自然発酵させた原料はパターン分析で同等性を示すのは確かに困難だが、自分たちのできる範囲で何らかの評価指標を設定し、科学的根拠を持って同等性を説明できるようにしてほしい」などとコメントした(本紙1月1日号インタビューより抜粋)。
なお、サプリメント形状の製品についてはGMPが要件化され、来年9月1日までに対応する必要がある。ただし、GMPへの準拠を証明するチェックリストが現時点でも公開されていないため、一部の事業者からは困惑の声も聞かれている。
業界団体の関係者は「制度見直しに関してはGMPのチェックリストを含めて曖昧な点も残っているため、今後さらに厳しいルールが課される可能性もある」と警鐘を鳴らして鳴らしており、今後も消費者庁の動向を注意深く見守っていく必要があるだろう。
㊦に続く(1月24日(金)公開予定)
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