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【インタビュー】岡山理科大学・松浦信康教授
サチャインチ果皮の機能性と特徴成分
岡山理科大学 生命科学部 生物科学科 教授 松浦 信康氏
南米や東南アジア原産のサチャインチは「スーパーフード」の一つとして知られ、ナッツやオイルとして食されてきた。一方、近年の研究では、サチャインチの果皮を利用したお茶に糖尿病を予防する効果が示唆され、注目されている。3月29日に「日本薬学会第145年会」でサチャインチ果皮の新知見を報告した岡山理科大学生命科学部の松浦信康教授に、サチャインチ果皮の特徴や機能性について聞いた。

医薬品と同じ試験系でエビデンス創出へ
―松浦先生の研究テーマを教えて下さい。
松浦 糖尿病や高脂血症をはじめとした生活習慣病の予防・治療に効果のある天然食資源を探索し、その機能性に関与する化合物を明らかにする研究を長年続けてきました。生活習慣病の対策として「予防」が重要なのは常識ですが、医薬品の世界に「予防薬」という概念はほぼありません。
そこで、医薬品と比べて効果は弱くても、同じ作用メカニズムを持つ食品があれば、元気なうちから日常的に摂取することで生活習慣病を予防できるのではないかと考え、食品由来の化合物に着目しました。食品由来の化合物であっても、医薬品と同じ試験系で作用メカニズムや有効性を検討し、良い結果が出れば動物試験やヒト試験にスケールアップできるような信頼性の高いエビデンスの創出に取り組んでいます。
―サチャインチに注目された経緯は。
松浦 5年ほど前に、サチャインチの果皮を使用したお茶を販売するトキワ漢方製薬(大阪市中央区)から研究依頼をいただいたのがきっかけです。
サチャインチ茶は、原産国のタイでは古くから食経験がある安全な食品である一方、伝承的に糖尿病の治療効果が知られているといいます。
日本国内では流通実績がなく、モニター試験では血糖値上昇抑制作用が示唆されていたものの、成分や作用機序については先行研究が全く無かったため、研究者としては非常に興味を持ちました。
―サチャインチ果皮の機能性や特徴的な成分は。
まずは細胞試験でサチャインチの果皮から抽出したエキスの抗糖尿病作用を検討したところ、糖や脂肪の代謝に関与する遺伝子・PPARγの発現を増加させる効果が認められました。
その効果は同じ作用機序を持つ糖尿病治療薬の30~35%ほどだったのですが、健康なうちから日常的にサチャインチ茶を摂取していれば、糖尿病を予防できる可能性が示唆されました。
さらに、サチャインチ果皮抽出エキスの成分解析を進めたところ、ポリフェノールの一種であるジメチルエラグ酸を特定することができました。
エラグ酸は機能性表示食品の関与成分にも利用されるなど、よく知られる成分ですが、化学構造式が少し違うと活性も大きく変わるケースも多いため、サチャインチならではの効果があるのではないかと注目しています。
水溶性成分の探索は終了したのですが、脂溶性成分についてはこれから探索を行いますので、ジメチルエラグ酸の他にも優れた生理活性を持つ化合物がないか、またそれらの相互作用などは今後の研究で明らかにしていく必要があります。
最終的には、医薬品のように「これぐらいの量を飲めば確実に効果がある」というエビデンスを確立することが目標です。
―ありがとうございました。
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