市販薬販売ルール遵守徹底を呼掛け/JACDS

2021年10月28日

市販薬による薬物濫用の根絶目指す

 一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は、厚生労働省の市販薬販売ルール遵守の実態調査「医薬品販売制度実態把握調査」実施を前に、販売ルール遵守を徹底するよう会員企業トップに呼び掛けた。

JACDSの池野隆光会長

 厚生労働省は市販薬の販売ルールが守られているかどうかを毎年調査し、結果を公表している(調査は毎年11月~2月ごろに実施し、翌年9月に公表)。

 直近の2020年度調査の結果では、ドラッグストア(店舗販売業)の成績はは前年と比べ、全体的に改善し、特に一昨年NHK等の全国メディアで取り上げられた「濫用の恐れのある医薬品」※の適正販売の割合は(グラフ①)のとおり、2019年(平成30年)51.9%から2021年(令和2年)73.9%まで改善していることが分かった。

濫用等の恐れのある医薬品を複数購入しようとしたときの対応(1つしか購入できなかった:60.4%/複数必要な理由を伝えたところ、購入できた: 12.9%/質問等されずに購入できた:26.7%/その他:0.0%)。

                (グラフ①)
 ※エフェドリン、コデイン(鎮咳去痰薬に限る)、ジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る)、ブロムワレリル尿素(ブロモバレリル尿素)、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン(鎮咳去痰薬のうち、内服液材に限る)を成分として含有する医薬品。

業界を挙げ濫用問題に取り組んだ成果があらわれた 

 これは、2019年10月のJACDS理事会で「市販薬による10代の薬物濫用撲滅宣言」を決議して以来、業界を挙げて濫用問題に取り組み、「原則一包装しか販売しない」ことを徹底してきた成果と言える。

 また、協会が実施した「濫用薬」を対象の「レジ・アラート・システム※の導入状況調査」では、JACDS会員店舗の約79.0%が導入(予定を含む)しており、このような企業独自の取り組みも改善に寄与したことがうかがえる。

※レジ・アラーム・システム: チェーン展開の強みを活かした、数百ある「濫用薬」をレジで判別し表示で知らせるシステム。近年、その進展は著しく、2021年8月1日現在で導入は15,149 店舗(会員店舗の77.4%)、2022年4月1日までの導入予定を含めると、15,376 店舗(会員店舗の78,6%)と会員店舗の8割近くにまで達している。

残り26.6%の根絶目指し、重点的な販売ルール遵守徹底を

 「濫用の恐れのある医薬品」の適正販売の遵守率は向上しつつある反面、いまだ73.4%と70%台にとどまり、逆に濫用の恐れを未然に防いでいない「質問されずに複数個購入できた」が26.6%も存在している。また、第一類医薬品が対象の「文書を用いた情報提供(68.1%)」と「情報提供の理解の確認(75.1%)」も約70%台にとどまっている。

 このため、JACDSでは10月22日の理事会において、70%台以下の該当3項目を当面の重点対象として、販売ルールの遵守徹底に取り組むことを決議した。

 目指すは「店舗による『市販薬による薬物濫用の根絶』」および「医薬品の正しい使用の啓発」、ひいては「セルフメディケーション推奨による社会保障費の軽減」だ。

 ドラッグストアの専門性が活き、「街の健康ハブステーション」の一員としての活躍を果たすため、JACDSの遵守徹底は重要な意味を持つだろう。

厚生労働省による 「医薬品販売制度実態把握調査」 の概要(2020年度実施)

(1)薬局・店舗販売業の店舗販売に関する調査
一般消費者である調査員が、全国5,025件の薬局・店舗販売業者の店舗(薬局1,861件、店舗販売業3,164件)を訪問し、医薬品の販売ルールに係る事項等に関し店舗での販売状況等について調査(調査期間は令和2年11月~令和3年2月)
(主な調査項目)
①従事者の区別状況
②要指導医薬品の販売方法(本人確認、薬剤師による販売)
③一般用医薬品の情報提供、相談対応の状況 等
(2)薬局・店舗販売業の特定販売(インターネット販売)に関する調査
特定販売の届出を行い、インターネットで一般用医薬品を販売しているサイト500
件を対象に、医薬品の販売ルールに係る事項等に関しインターネットでの販売状況等
について調査(調査期間は令和2年11月~令和3年3月)