社説:飽くなき業態進化で勝ち残る
社説:飽くなき業態進化で勝ち残る
マツモトキヨシHDとココカラファインが今年10月に完全統合し、「マツキヨココカラ&カンパニー」が誕生する。両社の2020年度の売上高予想の合算は9,516億円。かたや最大手ウエルシアHDの2020年度予想売上高は9,541億円、それに次ぐツルハHDの予想売上高は9,200億円なので、マツキヨココカラ連合はNo2に躍り出る。そして次期以降は、1兆円を念頭に三つ巴の競争が始まる。
マツキヨココカラの店舗数は3,199店(うち調剤取扱店742店、2020年12月末現在)で、こちらはウエルシアHDの2,202店(2月末現在)、ツルハHDの2,388店(同)を上回る。全国3,000店超の店舗網とその顧客データの活用は、マツキヨココカラの新たな強みになる。
薬価政策に収益が左右される調剤事業も、一定の規模があれば効率的な運営を維持できる。将来的に体力のない中小薬局が淘汰されれば、「生活圏に入り込んだ薬局」として、さらにその価値は高まる。
また両社ともコロナ禍でインバウンド需要が消失したが、アフターコロナでは反転攻勢に出る。統合3年目をメドに営業利益300億円程度の改善効果を創出し、それを原資にインバウンド・アウトバウンドを両にらみにアジアNo1を目指す。2025年度に売上高1.5兆円を築く考えだ。
さて、1兆円企業と聞いて思い出されるのが、日本のチェーンストアの発展に貢献したかつてのダイエーだ。
同社は1980年に小売業初の1兆円に到達した後、90年代に業績不振に陥る。引き金はバブル崩壊による巨額の負債だが、主力のGMSのテコ入れが遅れ、また新業態の失敗もあり、顧客離れが起きていた。
そしてこの間に出てきた新興勢力がドラッグストアである。GMSが得意としてきたH&Bを、雑貨を、近年では食品を奪って成長してきたドラッグストアが、今や1兆円に迫る企業になったことは意義深い。
1兆円は確かに優位な規模だが、それはドラッグストアが、顧客のニーズに応えるために一心不乱に“業態進化”をすすめた結果である。裏を返せば、業態進化なき規模拡大は膨張であり、1兆円企業と言えども安泰でない。
今やコンビニもスーパーもホームセンターも家電量販店も、ドラッグストアの領域を奪うべく業態進化を始めている。その競争に埋没しないよう、同質・画一的な業態から脱却することが、これからの課題だ。そして、その課題をクリアできれば、規模の大小に関係なく勝ち残るチャンスがある。
(八島)