景表法・健増法規制基準の改定と処分広告の摘発(13)

2023年6月8日

※「ヘルスライフビジネス」2023年1月1日号掲載の記事です。                        消費者庁は12月5日に「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」に関する一部改定の内容を公表した。これが景表法と健増法の最新の規制基準になる。また、装置命令が11月18に公表された大阪市の一般社団法人の代表理事ら2人とこの法人を、大阪府警が12月9日に薬機法違反容疑で書類送検した旨が報じられている。広告表現に対する景表法の処分と薬機法の摘発が重複して行われた筆者の記憶では2回目の事例である。どちらも喫緊の解説が必要だが、前者は分量が膨大になるので一部を、後者は規制・取締り上の意味について解説したい。

コロナ予防などの広告が処分後に摘発された

これまでの表現例に新たに追加されたもの

 一部改定として、これまでの規制基準に追加された表現例を紹介すると次のようになる。

① 規制対象になる「健康食品」に、明らかに一般食品と認識される物も含まれることを明示。

②「疾病の治療又は予防を目的とする効果」の例に「コロナウイルス、認知症の予防」を追加。

③「身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効果」の例に

新陳代謝を盛んにする、若返り、アンチエイジング、免疫力を高める、細胞の活性化、治癒力が増す、○○は活性酸素除去酵素を増加させます、歩行能力改善」を追加。

④「特定の保健の用途に適する旨の効果」の例に「体脂肪を減らすのを助ける、本品は骨密度を高める働きのある○○(成分名)を含んでおり、骨の健康が気になる方に適する」を追加。

⑤「栄養成分の効果」の例に「ビタミンDは、腸管でのカルシウムの吸収を促進し、骨の形成を助ける栄養素です」を追加。

⑥「『健康保持増進効果等』を暗示的又は間接的に表現するもの」に「妊活、腸活、スリム○○、減脂○○、デトックス○○、カラダにたまった余分なものをスッキリ」を追加。

規制基準自体が新たに追加されたものなど

 以下はこれまで例示のなかった基準が新たに追加されたものである。

⑦「身体の組織機能等に係る不安や悩みなどの問題事項を例示して表示するもの」が「『健康保持増進効果等』を暗示的又は間接的に表現するもの」の新たな項目とされ「こんなお悩みはありませんか?疲れが取れない。健康診断で○○の指摘を受けた。運動や食事制限が苦手。いつもリバウンドしてしまう。メタボが気になる。最近、体力の衰えを感じるのは、○○が不足しているせいかもしれません。年齢とともに、低下する○○成分」を例として追加。

⑧ その他の新たな追加などには以下のものがあるが、紙数の都合で、概要の紹介に止め、機会をみて詳解したい。

「冊子の別送などの規制」「商品名の暗示に関する規制」「アフィリエイト広告での広告主の責任」「不実証広告規制の提出資料に関する基準」「トクホ広告の問題表示例の追加」「一般健食広告の問題表示例の追加」

今回の改定内容に関する広告実務上の留意点

 ①~⑧に分けて紹介した改定内容で、①~⑥は例の追加であり、判断基準の基本が改訂されたわけではない。追加例は、確認できた限りでは、これまでの処分や指導例から選ばれたものである。

 ⑦は「健康保持増進効果等」の暗示・間接表現の例として新たに追加されたもので「健康保持増進効果等」はトクホやキノウに認められた効果である。審査のあるトクホでは使いにくいとしても、機能性表示食品(キノウ)にこのような悩みの例が使えることを示したものだと筆者は理解できた。

すでに使われている例の追認であるとしても、広告表現の範囲が広がるので、その意義は大きい。

 一般健食広告の規制基準の中で「本件商品に含まれる成分の効果を強調する表示が虚偽誇大表示になることが追記された。これは成分に関する企業広告の規制についての基準ではなく、商品広告の中の成分に関する基準だと思われる。

 ただし、成分に関する企業広告でも、成分名が商品名を暗示し、一体とされれば、商品名が記載されたことになり、商品広告とされる場合がある。

措置命令後に摘発された広告に関する検討

 規制基準の改訂とは異なるが、リードで述べたように、措置命令を受けた広告がその後書類送検された。これは罰金刑の多い軽い刑事処分であるが、摘発であることに変わりはない。

 12月1日号の当欄で「万病に効果があると強調している健食の広告」が、措置命令だけで摘発されないのが、取締り基準の変化の傾向であると筆者の見解を述べた。今回の摘発は、この見解と矛盾することになるので、補足させて頂く。

 この広告には通常の難病への効果だけでなく、コロナへの効果という最優先の取締り対象になる表現が使われており、その点が摘発理由と思われる。一般健食の医薬品的効能に関する広告が摘発されず、処分だけで済む傾向は否定できないが、コロナ禍に関するような広告が優先して摘発された事例と言える。

 12月1日号での筆者の見解が、すべての摘発が行政処分にシフトされるといった印象を与えたのであれば、それは誤りになるので訂正させて頂きたい。ただ、今回の摘発が書類送検であったことは、罰金刑だけで済むと推測できる。従来であれば身柄送検で裁判になる事例であり、その点は変化が感じられる。


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